1989年9月、誤報 がきっかけとなり生まれた人々の熱狂と歓喜に満ちた行動は、東西に分かれていた領域、国民、主権を再びあるべき姿へと戻す歴史的な出来事となりました。 「ベルリンの壁崩壊」そして「東西ドイツの統一」といわれる歴史を、当時幼かった私たちは、遠い異国の出来事として、情報として知るだけでした。そして 今、青年へと成長し、一人の国民として考えた場合、それがいかに特別な出来事だったのか計り知れません。ただ、唯一言えることは、当時東西に分かれていた ドイツ国民が、この問題と深く向かい合い、解決を強く願っていたということ。その想いが行動へと繋がり、平和的な方法で国家をあるべき姿へと戻したという ことです。

 私たち日本国民は、国家の問題である北方領土問題に対して、深く向き合い、解決を強く願っているでしょうか?

  1945年8月、日ソ中立条約を一方的に破棄したソ連によって、日本固有の領土である北方領土は不法に占拠されました。同年12月、安藤石典根室町長が GHQに不法占拠に関する陳情書を提出して以来、四島からの引揚者や根室市民が中心となって北方領土返還要求運動がはじまり、53年目となる私たち根室青 年会議所も、創立以来運動に参加し、問題の啓発や意識醸成を図る活動、政策提言、後継者の育成など様々な活動を行ってきました。北方領土問題があるという ことすら知られていなかった時代から始まった根室の行動は、やがて全国へと広がり、各地における運動推進の拠点となる県民会議をはじめ、様々な団体が設立 し、青年会議所も北方領土返還要求現地視察大会を実施するなど、多くの人々によって活動が行われ、今では国民の約7割が北方領土のことを知るようになりま した。
 ただ返還運動を行う者が現場で感じていることは、決してポジティブなモノばかりではありません。未だに同問題や活動に対する偏見や誤解に よって、取り組みに対する優先順位が低い為に、人々からの理解や協力が得られないことがあります。これは北方領土返還要求運動に対して消極的・否定的な立 場の国民が6割以上いることが世論調査によって明らかになっています。北方領土問題の解決そして四島返還は、外交交渉を後押しする国民世論の喚起が必要と いわれ、多くの国民が北方領土問題を知っている今、いかに国民の北方領土問題解決への意識醸成を図り、様々な分野で解決への優先度を高めることが、世論喚 起となる重要なポイントです。一方それには大きな壁があると考えています。
 
 私たちが暮らす根室は、北方領土返還要求運動原点の地とし ての経験、市民の4人に1人が元島民並びにその親族という人の存在、行政区の一部を不法に占拠され、隣接地域としての直接的な生活への悪影響など、同問題 の重要さを実感できます。ただ、根室から離れるほど実感は薄れていき、問題意識も薄れていきます。この問題に対する実感が、より深い意識醸成と積極的な行 動へ繋がらない「壁」の一つであると考えています。

近年、根室青年会議所における北方領土返還要求運動の一つに、後継者育成事業北方領土 出前講座があり、毎年、行政、教育、そして私たち民間の三者が共同で、他の地域へ出向き、北方領土問題の啓発・学習を行う講座を実施しています。受講者の 多くが、根室で暮らす青年や青少年だから伝えられる情報や想いに関心や興味を寄せ、出前講座をきっかけに運動に参加するようになった人々が多くいます。本 来講演会は知識人や著名人、それに関わる専門家などプロフェッショナルが講師を務めますが、出前講座は根室市民(アマチュア)が講師を務めます。奉仕活 動・学習の一環として限られた時間の中での取り組みであっても、私たち根室市民が日頃感じているモノを積極的に伝えることで、物理的な距離を想いで近づけ 「壁」を壊す方法の一つになっています。
これは私たち根室市民一人ひとりが、北方領土問題解決に繋げられる力を持っており、誰もが取り組める活動 だと考えています。ただ、多くの根室市民もまた壁があり、元島民や特定の運動団体だけが取り組む活動だと思っています。根室の地域振興に関する問題点の一 つにも挙げられますが、私たち根室市民は、根室の「力」を自覚できていないということがあります。観光で訪れた人、また根室に移り住みはじめた人は「唯一 な魅力がある」と、根室独自のモノに特別な価値を認めていますが、私たち根室市民はその価値に気づけていない、または過小評価している傾向があります。ど んなに魅力的なモノがあっても、それを有効に活かすことに消極的では効果が期待できません。これは北方領土に関しても同じ傾向があり、元島民の歴史として の重大な実感や想いはもちろん、若い世代が日常で感じる些細な実感・想いもまた日本国民に伝えるべき価値があります。

 本年度、根室青年 会議所では、約10年ぶりに北方領土問題を専門的に取り組む「北方領土対策室」を発足し、同問題の解決への一助を図る為「モノ」や「コト」など様々な返還 要求運動を行っていきます。同時に「ヒト」として、根室市民が問題解決の一翼を担える力を持っていることを自覚し、北方領土に対する過去・現在・未来を改 めて考え、ある者は青年としての視点で、ある者は青少年としての視点で、元島民・関係者としての視点、経済人としての視点など、根室市民一人ひとりが、そ れぞれの立場・視点から実感として抱く北方領土への想いを伝えていくことを重視し、より多くの国民の北方領土に対する「壁」を壊し、問題解決への意識醸成 を図り、様々な分野で解決への優先度を高め、北方領土問題解決の一助を図る活動してまいります。

事業計画(案)
1.想いを伝える北方領土返還要求運動の実施
2.北方領土問題への意識醸成を図る事業の実施
3.北方領土返還要求運動現地視察大会への参画
4.その他、北方領土返還要求運動への参画・協力
5.北方領土・根室テストの実施